彼の過去と、彼との未来

私の知らない彼がいる。

彼と過ごす時間が長くなればなるほど、そんなことを思うようになった。

私の目の前にいる彼は、誰よりも優しくて、よく笑って、時々甘えん坊で、でもしっかりとした考えを持っている。

私が知っている彼は、そういう人。でも、ふとした瞬間に、彼の中に「私の知らない何か」を感じることがある。

例えば、遠くを見つめる彼の目。

何かを思い出しているのか、あるいは何かを考えているのか、その瞬間の彼の心の中に私はいない。

私は一番近くにいるのに、まるで手の届かない場所にいるみたいで、少しだけ寂しくなる。

「何を考えてたの?」

そう聞いてみても、「ただのオフモードだよ」と言って笑うだけ。たぶん、本当に大したことではないのだろう。

でも、もしかしたら、私の知らない過去の彼がそこにいるのかもしれない。

私の知らない彼。

生まれてから今までの間に、彼がどんな景色を見て、どんな気持ちになって、どんな恋をしてきたのか。私は彼の人生のすべてを知ることはできない。

過去の彼は、私が知ることのできない時間の中で生きてきた。たくさんの出会いがあって、たくさんの別れがあって、嬉しいことも、悲しいことも、全部積み重ねて今ここにいる。

でも、私だけが知っている彼もいる。

私といるときの彼。

朝、まだ眠そうに目をこすりながら、ぼんやりと「おはよう」と言う彼。

カフェラテを一口飲んで、「今日のミルク、スチーム上手」とぼそっと褒めてくれる彼。

映画を観ているとき、感動シーンでこっそり涙をぬぐってたら、気づいた瞬間「どうしたの〜」と私を子供扱いして、ぎゅっとしてくれる彼。

寒い夜、毛布の端を引っ張ってくるくると包まりながら、無意識のうちに私の方へ寄ってくる彼。

そんな彼は、きっと私だけが知っている。

彼の過去は私の知らない世界だけど、彼の未来には私がいる。

そう思うと、なんだか少し安心する。

でも、未来だって何が起こるか分からない。

どれだけ一緒にいたいと思っても、いつか「死」という形で私たちは別れることになる。それは、避けようのない現実だ。何十年先の話かもしれないし、もしかしたらもっと早く訪れるかもしれない。

ある日突然、彼がいなくなってしまうかもしれないし、私がいなくなってしまうかもしれない。

そんなことを考えると、怖くて仕方がなくなる。

だから、私は今日も彼に気持ちを伝える。

「好きだよ」

「ありがとう」

「一緒にいられて幸せだよ」

言葉にしなくても伝わる、なんていうのは幻想だ。人の心は移ろいやすいし、愛も時間とともに形を変えていく。だからこそ、今この瞬間の気持ちは、ちゃんと言葉にして伝えたい。

今日の「好き」も、今日の「ありがとう」も、明日にはもう昨日のものになってしまう。だから、私は毎日ちゃんと伝えたい。

「ずっと一緒にいられたらいいね」

ある日、彼が何気なくそう言った。

「ずっと?」と聞き返すと、「うん、朝起きて、一緒にカフェラテを飲む日がずっと続けばいいのに」と、小さな声で言った。

私は、その言葉がとても嬉しかった。

永遠なんてないけれど、私たちはきっと、同じ未来を願っている。だからこそ、今日も一緒にカフェラテを飲もう。明日も、明後日も、その先も。

私の知らない彼の過去に嫉妬することも、彼の心が遠くに感じて不安になることもあるけれど、それでも私は、彼と同じ時間を積み重ねていきたいと思う。

未来のことは分からない。でも、少なくとも今は、彼の未来に私がいる。

それが、何よりも幸せなことだと思う。

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (1件)

  • 夜分に長文を失礼します。お身体崩さず、お元気ですか?^ ^
    私なりに今回のブログや動画やフォロワーさんのコメント等を拝見してあくまで「私」、「ライラが」思った感想です。まず、素直で正直な気持ちを世間に公表されている事は覚悟が要ることだろうと思いますし、リスペクトしています😌

    そしてぴあさんは今はパートナーさんとの交際が始まって間も無いと察しますので、幸せな事もある分パートナーさんを知ろうとする中で全ての面を知りたいがゆえに不安な事もあるかと思います。

    まずは、感情的になり過ぎず、ご自身を一番に大切になさって下さいね。更新頻度もどうかご無理なさらず。それで自分に少しでも自信をつけられるようになったら、自然とパートナーさんに対して寛容的に接することが出来ると思いますし、時間が解決することもあるかもしれません^ ^ 余裕は誰にも無いと思いますし、余裕が無くても良いのではないでしょうか(^^)あいみょんさんの「黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を」の歌詞でも表現しています。(祖母の話で恐縮ですが、やむ無く祖父とのお見合い結婚となる前に大恋愛をしていた交際者との恋愛の話を未だに大切にしていますよ😅でも祖母はあの恋心が消化しきれずにいるからこそ、人を愛する事を純粋に素晴らしいと思えていられるし、子供や私たち孫が産まれて幸せだとも良く話してくれます😂)

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